No。376 生きてる字
日曜のランチに女性書道家の越川晏遷(あんせん)先生が、
お食事にいらっしゃいました。
仕事場にお伺いしてから3年ほどがたつでしょうか。
エネルギッシュな先生からいつもパワーをもらい、柔らかで飽くことがない探究心に、
大いに刺激をもらいます。
お正月に実家に帰った時、
89歳の父が年末に書いた字をコピーしてもらって来ていたので、
今日先生に見てもらいました。
父は身の回りのことも一人では難しく、デイサービスを利用していますが、
その職員の方が父が書いた看板の字を見て、
施設の玄関に飾る字を書いてほしいと、頼まれ頼まれたと言うことでした。
浄土真宗の僧侶として、また書道家としても仕事をしていた父ですが、
すっかり弱って、最近では、自宅で筆を持つことはありません。
12月30日に紙いっぱいに力強く賀正と言う字を書いて来て、疲れたのか、
横になって眠っていましたが、母も「まだこれだけ書ける」と喜んでました。
先生はその字をみるとなり、「うわー生きてる字だね」とおっしゃり、
「これだけ書くのだから、疲れるのは当たり前」と。
そして、みんなは気軽に一筆書いてと言うけれど、
「作品を仕上げると言うことは、私はここに生きてると言うことなんだから、
簡単なことじゃないのよ」とお話しされました。
「こちらが良ければ、こちらが悪い、すべてうまくいくなんてありえないわよ」と,
言われたので、
「だからまた、次の作品に向かわれるのですね」などのお話しをしました。
いつもおうかがいしているように、「字はうまい、下手ではない、その人そのもの」
ともおっしゃてました。
今、きれいな字ならパソコン上にいくらでもある。
でも、そういうことじゃない、字の中にお父様の命が詰まっているねと言うお話しに、
私も勇気をもらい、うれしくなりました。
生きてる字。活きてる字。どちらなんかな。短い会話でしたが、
書に向かわれる先生の真剣な態度は、迫力があり、すごく魅力的です。
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