No.944 腕を振るう
お客様が少ない夜でした。
お弁当を頼んで下さった古くからのお客様が
「お父さんが腕を振るう料理はどれかね?」と尋ねられる。
店のことをよく知っていてくれるお客様からの言葉に、
スタッフ一同「ええ?全部ですが…」という状況下、
シェフは「一枚一枚、肉を切って全て腕を振るっています」と答えてました。
そういえば、この方に以前
「玉ねぎが入ってないハヤシライスが食べたい」と言われたこともありましたっけ。
私は「腕を振るう」って久しぶりに聞いた。
今やほぼ死語ではと興味深く話を聞いていて、
さっそく「腕を振るう」を調べて見ました。
ネットの「コトバンク」、娘の愛読書の
「広辞苑」「大辞林」色々あたっているうちに
「ドラゴン桜」の「studyZ」の解説がとてもおもしろかったです。
語源は腕に能力と言う意味があり、振るうは大きく動かす、
つまり「技芸の能力を存分に発揮する事」とあります。
反対語は「手を抜く」で、こちらは持ってる力を出しきらず、
ほどほどの力で行うこと。
中を抜いて「力のない状態にする」とあり、集中力が無くなった状態と。
また「投げやり」も反対語として上げてあり、なるほどなあ、と。
StudyZのまとめには
「日々の精進で技量に磨きをかけ腕を上げ、
その技量を発揮する機会に腕に縒りをかけて準備を終えたら、
大いに腕を振るって人に喜んでもらえるものを作る、気持ちの良い言葉」
とありました。
「腕」にも能力や技術という意味も元々あり、意味深い素敵な言葉です。
そういえば「お客様に料理を振る舞う」というシチュエーションも家庭では、今はほとんどないのでは。
集まった時にはレストランや豪華なお惣菜のお世話になることも多くて、
せいぜい持ちよりとか。
人が人に、自分の力を出しきって、もてなすことは大切で、当たり前なのに、
だんだんそういう機会がなくなっている現実にも気づかされました。
肉を一枚、一枚切ると言う、
普段見慣れていることも普通ではないと思うと淋しくもあります。
お客様が少ない夜でしたがだからこそ、
気付きのある夜にもなりました。
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