お客様が帰られた後に、テーブルを片付けに行ったスタッフが、
「これなんですか?」と持ってきたもの。
「使い捨てライター。知らないの?」というと「初めて見ました」というので、びっくり。
まあ、タバコは回りに吸う人が激減しているので、無理もないですが。
火を付けて、見せようとすると、
今は簡単には火が付かず、相当な力がいります。
これには私もびっくり。
何度も力任せに押したおかげで、治りかけていた腕の痛みが再燃。
こんなとこで、燃えなくていいんだけど。
私たちの年代ならば、よく使っていたものが、
若い子たちは使えない、知らないことが色々あります。
瓶の栓抜きは、ほぼ全員が教えなければ、できません。
おじいちゃん、おばあちゃん宅が瓶ビールを飲んでいたのを、見た子も少数。
ビールは缶でプルトツプが当たり前。
店では瓶の栓抜きは必須なので、初めに教えています。
後は、缶切り。これもプルトツプが主流で、できない子ばかりです。
当たり前にあった道具も、ひっそりと忘れられていくのかも知れませんね。
逆に若い子たちが使う道具、これは私たちはさっぱりです。
最たるものがスマホ。教えてもらいます。
動作も処理も早くてあっという間に解決してくれます。
ライターも栓抜きも、缶切りも、昭和の道具として博物館のようなとこに入れられ、
やがて見かけぬようになるのかな?
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弟のお嫁さんは北海道の出身で、
「お正月に帰省した折りに、鹿肉をもらってきたので、おいしい調理法ありますか?」とのこと。
少し前に、女子会でワイン飲み会をやった、北区のイイダのキッチンさんで、
すごくおいしい鹿肉の煮込みをいただいた直後でした。
余りにもおいしかったので、作り方を聞いてきました。
「ありますよー。煮込み教えますね」と帰京した時、お嫁さんに自信満々でお伝え。
お正月にはローストビーフを伝授して、おいしかったと喜ばれ、
今回も熱心にメモを取ってられました。そして、私にも鹿肉を一ついただけるとのこと。
イイダのキッチンさんでは、「鹿のすね肉を赤ワインと干しぶどうに漬けて・・」という説明。
シェフに聞くと、発酵を助けるためにヨーグルトも少し入れると良いと。
さて、これこそが鹿の足!と思える生々しく細い赤肉。
漬ける時にシェフに見てもらうと、「これ、フィレ肉だね。すごくいいとこだよ」と言いながら、
筋などを取り除いていました。
それでも、こんなに細いのだから、すねよねぇと思っていた私。
そして漬け込み完了。
ごぼう等の野菜と一緒に焼き目をしっかりつけて、
赤ワインを足して煮込み始める。
あれ?少し煮たら、柔らかくなってきた。
イイダさんは、柔らかくなるまで、オーブンに放り込むと言っていたなぁ。
とさらに煮込んでいくと、あらら、肉が固くなってきた。
で、一旦終了してシェフに相談することに。
ちらっとフィレ肉だったら、取り返しがつかないなと頭をよぎるも。
すね肉→煮込み路線から離れられない私。
シェフからは、「フィレだから、ローストがよかったね。
でも、理論上はどんな肉でも煮込み続けると柔らかくなるはず」と言われ、、、
半信半疑ながらも煮込むしかない。
と煮込み続けること、さらに2時間。柔らかくなってきました!
やれやれ、やっとなんとかなった鹿肉。
ソースも煮詰まって、醤油と砂糖を少し足し、干しいちじく等も足して良いお味となりました。
使った赤ワインはちょうど一本。
大事に取ってあったフランスのおいしいバターを全部投入して、
インドから持ち帰ったサフランも投入した、サフランライスと共に鹿肉の煮込みをいただきました。
お味は海(バターの塩)、里(冬の根菜)、山(赤身の鹿肉)の滋味あふれる恵みを充分に堪能できるものでした。
肉も本当に柔らかくなっていました。
本来ならばソテーでサクッといただけばよかったんですね。
でも、これはこれで、おいしくよかったです。
思い込みは無しで、素直に素材の声に耳を傾けること。
シェフから言われた「理論上は」の言葉がいつまでも頭の中でぐるぐる回ってました。
お嫁さんには、漬け込みの後はローストと、お勧めの変更届けを出しました。
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自宅に到着したのは、夕飯時間はとうに過ぎていたけれど、
おいしかった鎌餅と唐板を食べることに。
和菓子でも餅菓子とせんべいというおやつ感覚なので、
枡形商店街で買った一保堂の京番茶を熱々のお湯で淹れる。
京都駅新幹線のお土産売り場ではティーパックが買える一保堂さんの番茶。
でも地元商店街では、さすがにリーフティーが売ってました。
これ以上スモーキーなお茶は私は知りません。
香ばしい香りと共に鎌餅をほうばる。
脱力した形もなんとも愛嬌があり、包んでくれるへぎに守られ、やわやわです。
頬張ると、なんとも言えない優しい甘さ。
でしゃばらず、スルッと口に入っていきます。
唐板。わずか1.5mm~2mm程の極薄のお煎餅。
パリッ。軽快な音に続く、ほのかな甘味。香ばしさ。
ついついもう一枚と手が出るけれど、何枚かいただくと満足感が満ちます。
鎌餅と唐板。どちらもでしゃばらず、優しいおやつ。
日々の生活により沿う、いいものに出会いました。
鎌餅を食べたシェフが、「こんな店になりたいねぇ」と。
「地味だけどおいしいものっていうことかな?餅を食べて、
そんな風に思えるなんて私も歩いた甲斐があったわ」というと、
「餅だけにモチベーションが上がる」なんてダジャレをおっしゃってました。
みんなが笑顔になるおいしい京都でした。
ちなみに、私の餅菓子No.1には大黒屋鎌餅と嵐山 鶴屋壽の桜餅が選ばれました。
次回また三重餅街道編を書いてみますね。
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鎌餅本舗を後に、次に目指すは上御霊神社門前の水田玉雲堂さん。
唐板(からいた)という小麦のお煎餅のみを作り、
売られているお店です。
静かな住宅街を歩くこと15分。
大きな上御霊神社をぐるりと回ったところに、真っ白な暖簾がはためいています。
そっけないほど清い店構え。
そして商品も唐板のみ。
なぜか番組の中でも、鎌餅と唐板が気になりました。
こちらは注文してあったのですが、
予約時間に着いた時にはまだ少し商品に余裕があるとのことだったので、追加で注文。
応対してくださった奥様とは、特別にお話しもしなかったけれど、
おひとりで、重労働のせんべいを作り、包み、販売もされている、
ご苦労を感じさせないようなさっぱりとしたご様子。
唐板の歴史は遣唐使によって伝えられ、作られていた様ですが、
応仁の乱によって一旦途絶える。
それを記録を頼りに再現されていて、500年暖簾を守っているというから、驚きです。
しかも今の奥様のご主人が亡くなられた後、暖簾を降ろされていたけれど、
止めないでの声に押されて、奥様がおひとりで同じ味になるよう再起され、
また暖簾を掲げられたたとのこと。
すごいことです。手伝いながら、じっと側で見ておられたのでしょう。
一枚、一枚、手焼きされたお煎餅の模様は生地が膨れ、縮んだ時に現れるので、
みな違う模様です。
目的のお菓子二つを持って、静かな住宅街から地下鉄で京都駅へ移動。
余りの人の多さに気分が悪くなりながら、駅での買い物を済ませ、実家移動。
母は思っていたより、元気そうだったけれど、やはり90歳の坂はきついようです。
歩くのが大変で、手すりなどをつけてもらうようお願いしているとのこと。
それでも、お茶とコーヒーを用意してくれていて、持って行ったお菓子を
「おいしい、おいしい」「明日、もう一つ食べたい」と意欲は満々。
毎日の炊事も工夫しながら、なんとかやっている様子に一安心。
弟夫婦にも見守られ、何より阿弥陀さまに見守られ、
日々の生活は大変だけれど、好奇心と食いしん坊魂は相変わらずを確認して、
慌ただしく家路に着きました。
さて、お菓子のお味は次回に。
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久々に、寒い冬。というのも変だけど、本当に寒いですね。
冬だから当たり前だけど、
このところは当たり前が当たり前でなくなってきているので。
こんな寒い冬に、今なら少し観光客も少ないかな?と、
休みに京都へ行ってきました。
実家のある京都へは年に何回も帰っているけど、
ほとんどが京都駅から程近い、実家と駅の往復。
今回は久々に街中を歩きました。
お正月に見た、京都の和菓子を紹介したテレビ番組。
その中で、どうしても食べてみたいものがあり、京阪電車で出町柳へ移動。
豆大福で有名な出町ふたばは定休日でしたが、
もう少し進み、枡形出町商店街の中にある満寿形屋。
まずは、こちらで鯖寿司とおうどんのセット。
なかなか狙い目の寒い平日と思ったけど、なんのー、50分待ちで入店。
並んでいる間、鯖寿司が終わらないか心配しながら、大将の手元を見ていたけれど、
無事、肉厚でまろやかな関さばと、
角がないすし飯の絶妙なバランスの鯖寿司をいただきました。
枡形商店街では、スーパーや乾物屋さんでの、買い物も楽しみ。
珍しい「鯛煮干し」というものを見つけ(炊飯器にご飯と一緒に入れて鯛めしが作れる)、
小豆などを買い物。立派な小豆だなと見ていると、
料亭の和久傳さんの畑を地域興しのため解放されて、
市場に出回るようになったという説明。
近年、良い小豆になかなか巡り合わなかったので、即、買い。
まだまだ話し足りないような、お店のおばちゃんと別れて、
商店街がぶつかる寺町通りを北へ。
お目当ての大黒屋鎌餅本舗を目指します。
残っているかな?鎌餅。これが食べたくて、今日来たのよ、
と思いながらも、足が鈍いこと。
日頃、あんなに店中を歩いていても、外を歩くのはまた別物。
やっぱり運動しないとダメだなと鉄砲漬けで有名な漬け物屋出町野呂本店の前も素通り。
お寺だらけの寺町の中でも、大きな阿弥陀寺の門前の、
小さな路地を入った民家と民家の間に、ひっそりと鎌餅本舗は佇んでいました。
佇んでいる、そう、本当にひっそりとそしてしっくりとその場所にありました。
これは本当においしそうな匂い。いや、特に外に匂いがするわけではないけど。
ぎりぎりセーフで私の欲しかった数があった鎌餅。
残りを聞くと後4個とのことで、全部分けてもらいました。
鎌の形をした餡の入った餅を一つずつへぎでくるんで、
包んでくれる間、しばし、ご主人と会話。とても気さくな方です。
今までもたくさんのメディアに紹介されていますが、
さすがにお正月のNHK番組。
反響も大きかったようで、おひとりで切り盛りされていて、
大変そう。
と思いきや、ご本人は「やれるようにしかやれまへんわ」と飄々としたご様子。
お年を尋ねると74歳とのこと。え?シェフの一つ下。
「ご無理なさいませんように」とお声をかけて、
お店を後に。
自分のパートナーには、こんな優しいこと言わないなぁと思いながらも、
お店を続けてくださいねと、思う。実はうちのお客様からもよく言われます。
やったー。念願の鎌餅まず、ゲット。
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